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help リーダーに追加 RSS 日本選手権出場もピンチ、トヨタがぬかるみに沈んでゆく・TL第7節トヨタ自動車vsNEC〜長良川

<<   作成日時 : 2008/12/02 00:33   >>

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画像 11月30日。この日、西では関西学院大学が初優勝をかけて天理大と花園で対決。同じボールゲーム、関西学生アメフトでも関学は立命と雌雄を決する大一番。関東大学ラグビーはリーグ戦グループが佳境に入り、東海大と関東学院大の激突。生観戦に、テレビ観戦に、とスケジュールに迷ったかたもいるに違いない。TLも1ヶ月のウインドウマウスを経て後半戦がスタートした。

 こんな大忙しの日に僕は何をしていたのかというと、なんと関ヶ原を越えていたのである。岐阜長良川競技場でTL第7節、トヨタ自動車ヴェルブリッツvsNECグリーンロケッツの試合が組まれている。大阪駅を朝7時17分に出発する新快速に乗り、米原でJR東海の快速(といっても岐阜までは各駅停車)に乗り継ぐ“鉄な”小旅行をすることに決めた。それほど時間はかからないし、普通運賃だけだから安く済む。大阪から米原なら在来線の距離だ。関東でいえば東京や新宿から小田原まで東海道線や湘南新宿ラインを乗り通す感覚か。そこからあと1時間電車に揺られれば岐阜に着く。これでもかなり時間に余裕を持った行程で、岐阜駅からバスを利用して競技場に到着したのは11時過ぎだった。なんせ係員に、

画像 「今日はバックスタンド、開けないんですか」

 と質問し、開錠して門を開けるところに立ち会ったのだから。

 トヨタとNEC。両チームはダークホース的立場にあける壮絶なライバル関係にある。ともにブレイクダウンの激しさを身上とし、ガツガツ体をぶつけあう姿は“格闘球技”の名にふさわしい。毎年のように中身の濃い試合になり、たとえば昨年は、5分近くもノーホイッスルのままフェーズを重ねてはターンオーバーの応酬、目まぐるしく攻守が入れ替わり、これぞラグビーという醍醐味を感じさせてくれた。今季、トヨタは6節終了時点で10位と予想外にふるわないけれども、NEC戦となれば現在の成績ではなく過去の対戦傾向が反映されていい試合をするのではないか、と期待していた。今季第6節、NECvsヤマハ戦を思い出すといい。接戦になってふだん決め手不足のNECに点が入る過去の傾向どおり、NECは5節でサントリーを撃破して勢いに乗っているはずのヤマハを柏の葉で返り討ちにした。トヨタvsNEC戦は昨季の上位チーム同士の対戦なのにノーTVマッチ。これは自分の目で観るしかないな、と考えての岐阜行きだった。

画像 NECのキックオフで試合開始。3分、NECのハイタックルでPKを得て敵陣へ進んだトヨタがチャンスを迎えた。ボールを大きく動かして切り崩しを図る。NECは幅広いエリアをカバーして対抗。ボールキャリアーをタッチへ押し出す。しかしトヨタはこの相手ボールラインアウトを奪い、モール攻撃。密集から抜け出した左FLアンガス・マクドナルドがトライ。左WTB水野弘貴のゴール成功で7×0と幸先のいいスタートを切った。

 9分にトヨタはNECのbW箕内拓郎に絡まれてノットリリースザボールの反則。SOヤコ・ファン・デル・ヴェストハイゼンにハーフウェイライン付近からの長いPGを決められて7×3とされたものの、直後のノーホイッスルトライが圧巻だった。試合再開のキックオフ、SO正面健司はいったん左へ蹴ると見せかけて右へ向き直る。ここへ疾風のごとくチェイスしたのが右WTBセコベ・レアウェレ。準備したプレーなのだろう。箕内との競り合いに勝って掌中にボールを収めると相手を引きずりながらゲイン、サポートについたFB遠藤幸佑がセコベからパスをもらい、大きなストライドでインゴール右隅へと飛び込んだ。その後トヨタが2PG、NECが1PGを追加。18×6、トヨタ12点リードで前半を折り返した。

画像 前半の主導権を握ったのはスコアが示すとおり、トヨタであった。ワイドに展開しながら、機を見て強い選手が走り込む。bW菊谷崇、右LO北川俊澄、そして遠藤、ジャパン組の絶好調ぶりが目を瞠った。ディフェンスも堅牢、好タックルを頻発させて何度もNECのボールを奪い、とくに正面、左CTB難波英樹の守りは昨季の荒法師ぶりを彷彿とさせた。NECの攻撃を起点で潰し、今季いちばんといっていいくらいの出来だった。

 もしディフェンスの弱いチームなら、もっとトヨタにトライを奪われていただろう。NECのディフェンスは相変わらずしつこい。右LO佐藤平、両FL浅野良太、グレン・マーシュらが黙々と仕事をする中、ボールに絡むといえばやっぱり箕内だ。前半だけで2度、トヨタのノットリリースザボールを誘った。ただ攻撃にまとまりを欠いた(これはいつものことではあるけれど)。後半は風上になるので、それを生かして手堅く敵陣へ行くこと、それが逆転のキーポイントだろう。

 ハーフタイムに考えたことは以上。後半開始から15分はまだトヨタのペースだった。菊谷は相変わらず近場を躍動しながら抜けていくし、遠藤はハイパントを自らチェイスするなどアイデアに溢れ、FWはいいモールを組んでいた。しかし17分にトヨタは自陣でオフサイド、このPGをヤコに決められて18×9とされたあたりから雲行きが怪しくなった。NECディフェンスはボールに絡むばかりか、トヨタの壁を乗り越えようとしていた。台風接近によってうねりの強くなった海から押し寄せる波が、時間の経過とともに防波堤を洗うかのようである。ヤコが長いキックで冷静にエリアを進める中、23分、NECは敵陣ゴール前のスクラムからのサインプレーでヤコがあっさりトライを決め、コンバージョンにも成功して18×16。2点差に迫った。

画像 25分、トヨタはマクドナルドがラフプレーでシンビンを食らってしまう。この反則で得たPGに成功してNECが18×19と逆転。が、トヨタも黙ってはいない。NECのノットリリースザボールを誘って敵陣深くへ入ると28分から怒涛の連続攻撃だ。FWでゴリゴリ行くが、こういう攻撃を守らせたらNECである。トヨタは密集に人数を集めてからBK攻撃に転じた。しかしNECは、途中出場の右WTBウィリアム・ライダーに3人抜きを許してもすんでのところで追いすがるなど、“らしさ”を存分に発揮する。次々とポイントを作るトヨタは菊谷に替わって途中出場、FLの位置に入った谷口智昭を鋭角に走りこませるもノックオンで好機を逸した。トヨタvsNECらしい、目の離せない試合になってきた。

 35分、トヨタはノットロールアウェイの反則。このPGをヤコが決めて18×22、NECがリードを4点に広げた。38分、NECが攻勢に。途中出場の松尾健がSOに入ってFBの位置に下がっていたヤコが前に出て、ラックの後方にいる途中出場のSH、アン・スンヒョとの間合いを計っている。とどめのDGだ。だが、これは失敗。まだトヨタ勝利の可能性は残っている。

 このリスタートを正面はチョン蹴りから自らセービング。時間がない。自陣からでもマイボールをキープして攻める作戦だ。小刻みにボールをつなぎ、敵陣22メートルライン手前でライダーへ。タッチラインを踏んでしまったが、トヨタはこのラインアウトのNECボールをスチール。40分経過のホーンが鳴り響く中、最後の攻撃が始まった。地元高校生サポーターたちを中心としたトヨタコールに包まれた場内は大興奮である。SH麻田一平が出したボールを受けた途中出場、若武者黒宮裕介が難波へパス、ループしてショートレンジでボールをもらう。さらには左PR谷地村政幸、右FL中山義孝もライン参加するなど手駒を並べ、そこへ箕内と途中出場の右FLセミシ・サウカワが2人がかりで襲いかかる。フィニッシャー、ライダーも麻田からじかにボールをもらいに行って走るなどあと一歩まで迫ったが、最後は攻め手の人数が足りなくなった。正面が孤立、ノットリリースザボールをとられて万事休す。18×22、NECがトヨタを逆転で下した。

画像 トヨタvsNEC戦らしく我を忘れて声が出てしまうような熱戦だったのだけれども、得点経過を冷静にふりかえるとトヨタの敗因は単純だ。……反則で自滅してるだけやん。NECの得点は1T1G5PGである(あえて太字で強調なのだ)。今日のトヨタはよかったのになァ……。スクラムは若干劣勢ながら、ラインアウトは整備されていたし、気迫は表に出ていたし。もっとキックをと思った人もいるかもしれないが、新ルールを過剰に意識したキッキングゲームはこのチームには必ずしも適さない、と考えているのでそこを敗因とはしない。後半になるにつれ運動量が減り、ラックからの球出しがスローダウンしたことの方が痛かったように思うが……まあ、とにかく惜しいゲームである。いつなんどきも“いい人”で終わってしまうフラれ街道一直線の好青年を傍から見ているような、そんな歯痒さを覚えてならない。NEC、怖い攻撃はしてこないのに。ヤコのエリアマネジメントは評価するけれども、誰しもがイメージする左CTBプライス・ロビンスとのコンビネーションは脅威というほどには機能していない。ロビンスが近鉄のジェフリー・イエロメのようなぺネトレーターなのか、サントリーのライアン・ニコラスみたいな仕掛け人なのかよくわからない、が率直な印象である。だから周囲にいる日本人BKも霞みがち。ヤコの能力の凄さは十分承知しているが、超一流ながらも日本ではブッチャーやハンセンの後塵を拝したプロレスラー、ディック・マードックやリック・フレアーといった面々とイメージがダブッてならないのだ。昭和のプロレスをよく知らない人にはかえってわからないか。素直に書くと、来日当初のトニー・ブラウンの域を脱し切れていないように感じた。

 NECの決め手不足について私見ながらその因を記したが、いずれ克服されるだろう。なので、もしこれを関係者の方々が読んでいたら寛大な心で許していただきたい。しかし、その代わりといってはなんだが、ディフェンスは文句なしだ。MOMは全得点を叩き出したヤコが選ばれたが、NECのディフェンスを観に来た感のあるこの試合、僕自身のMOMは体を張ったFWの選手から箕内に差し上げたい。この人のラグビー魂は生涯衰えることがないのではないか。彼のプレーを観るにつれ、斜にかまえた観戦記を書く自分が著しく不謹慎な存在に思えてくる。

画像 NECはサントリー、三洋といった上位チームとの対戦を残しているうえ、来週8節の近鉄戦を始め、手の合いそうな相手との試合が続く。それはトヨタも同じ。とくにトヨタの場合、オッちゃんサポーターの声援(野次?)は自虐ネタへと傾き、それらの声を耳にしながら敗戦を見届けた身としては、残り試合全部負けるかも?というマイナス思考に陥ってしまった。そうでなくとも日本選手権出場圏内の6位以内はきわめて厳しい情勢である。とはいえ楽な勝ち方はさせてもらえない接戦が続きそうなので、観る側としては退屈しないこと請け合いだ。退屈しない、はNECにもいえる。プロレスの話が出たついでにいうと、相手のよさを引き出して名勝負を演じることに関して、NECは全盛期の藤波辰巳を観る思いがする。

そんな両チームの今後の試合、観られる人はぜひ生で。……おもしろいよ。

付記 この試合はジャパンの新旧キャプテンがbWのトイメンで激突する試合でもありましたね。箕内、菊谷の両選手はその背中だけでほかのメンバーを牽引しているような……2人ともに風格を感じました。

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