ジャパン、スクラムに苦しむも3Tを挙げて勝利~11月欧州遠征第1戦 ルーマニアvs日本

画像 11月。世界のラグビーはテストマッチの季節である。ジャパンはヨーロッパへ遠征してルーマニア、グルジア、フランスのバスク代表、フレンチ・バーバリアンズと計4戦を戦う。どの相手もスクラム強者ばかりだ。11月10日、初戦の相手はルーマニア。先発メンバーの中で昨年のW杯のスコッドに入ったのは6名で、当時より力が劣る印象は否めない。とくにスクラムでスコットランドをめくり上げた左PRミハイ・ラザル、HOマリウス・ツィンクの名前がないのは残念だった。しかし、ピッチへ出てきたルーマニアのプレーヤーはみんなデカい。鎌倉の大仏みたいな人がゴロゴロいる。思えば昨年のW杯、ルーマニアが入ったプールBは、イングランド、アルゼンチン、スコットランド、グルジアが同組で、服の生地を一般人の倍くらい食いそうな人が揃っていた。まさに「肉のプール」だったが、試合内容もその体格にふさわしい肉弾戦ばかり。フィジカル面で、ジャパンは劣勢に立たされそうだった。

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 【●ルーマニア代表23×34日本代表○】

 前半はPGの応酬で推移。6×6で迎えた前半18分、ジャパンは相手ノックオンにより、敵陣22メートル地点左でスクラムを得た。しかし、ルーマニアの1番アップの押し込みは強烈である。なんとか持ち出した№8菊谷崇だったが、絡まれてノットリリースザボール。ルーマニアがPKを得た。ところがノータッチを蹴ってしまい、ジャパンはカウンターアタック。NZ帰り、来季、スーパーラグビーのハイランダーズ入団が話題のSH田中史朗が裏へ抜け、同じくNZ帰りのHO堀江翔太へつないで前進したのを皮切りにフェーズを重ねた。右展開でフラットパスを受けた右WTB廣瀬俊朗が前へ出て、再び22メートルラインへ。硬さが見られた入りとは異なり、パスの受け手が平行に並ぶシェイプの陣形ができはじめている。22分、相手オフサイドをクイックタップで仕掛け、ノット5メートルのアドバンテージが適用されたところで、ショットを選択。FB五郎丸歩のPG成功により、6×9とした。しかしルーマニアは36分、ジャパンのハンドによるPG。再び同点とする。

 39分、ルーマニアは左FLバシレ・ルスが倒れ込み。おまけに、反則の繰り返しによるシンビン処分を受けた。左LO大野均のピック&ゴーを押し返したあとだけにもったいない。このPGで3点をリードしたジャパンは、ルーマニアのリスタートキックをキャッチすると、前半終了のホーンが鳴っているにもかかわらず、自陣から果敢に攻めた。実況の土居壮さんはタッチキックでゲームを切るよう勧め、電話番号とメルアドの交換したんやから今日はもうええやん、それ以上深追いすると痛い目に遭うぞ――といった心配調の口ぶりだった。プレーを継続した42分、右FLマイケル・リーチがHOオタール・トゥラシビリ、右PRホラチウ・プンジャに捕まったポイントのホールディングで得たPKは、敵陣22メートル近辺。ここまで来たら、強気に押しの一手だ。イテこましたれ、とタップキックで仕掛けていく。近場の連続攻撃で防御を内側へ集めて左側にオーバーラップができると、9-10-12-8。左CTB立川理道が得意のロングパスを投じ、菊谷がキャッチして左隅へトライ。コンバージョンは失敗に終わったものの、9×17。ジャパンがリードを8点に広げ、前半を終えた。

 後半2分、ジャパンはハーフウェイ手前のスクラムでクイックヒールアウト、5フェーズを重ねたが、大野がサイドを突いたところで、右PR山下裕史にオフザゲートの笛。敵陣10メートル地点のラインアウトを得たルーマニア。しかしスローが合わず、ボールは堀江に入った。リーチから左FLヘンドリック・ツイへオフロードが通って敵陣22メートル内へ侵入したまではよかったものの、サポートが追いつけずに孤立。ターンオーバーされてしまう。7分、左サイドを突いたトゥラシビリを堀江、右LOトンプソン ルークが止め、リーチが絡んでノットリリースザボールに陥れたPGは失敗に終わったが、引き続きエリアで優位に立つジャパンは11分、相手オフサイドにより敵陣22メートル手前のラインアウト。ピールオフでリーチが突っ込んだあと、10フェーズを超える連続攻撃を仕掛けたが、13分、ラックの5秒ルールで相手スクラムに。ここで山下が引いて落としたという判定。チャンスを逸してしまった。

 17分、相手キックを廣瀬がキャッチしてワンパス。SO小野晃征が左スペース奥へ好タッチキックを蹴った。自陣ラインアウトから強い選手の縦を軸に攻めるルーマニア。ハーフウェイ近辺まで来たところで、SOアンドレイ・フィリプのパスにスローフォワード。ジャパンボールのスクラムで再開となったが、ルーマニアがスクラムの強さを見せつける。押し込まれながらも左へ持ち出した菊谷。ところがSHフロリン・スルジウのコンタクトを受け、ボールをこぼしてしまった。ルーマニアの№8ミハイ・マコベイが確保し、右についた右WTBマドリン・レムナルへパス。レムナルは、左WTB小野澤宏時がブレイクダウンに加わろうとした分、空いたスペースを一目散に駆け、右中間へトライ。コンバージョンの2点を併せて、16×17。ルーマニアが1点差に迫った。

 このトライで勢いに乗ったか、ルーマニアは22分、ハーフウェイ地点のラインアウトを皮切りに猛攻。右展開、途中出場の右CTBロモロス・ボアールとFBカタリン・フェリクのスイッチで、残り10メートルまで肉薄した。しかし直後、左PRペトル・タンバがハンドリングエラー。チャンスを逸する。25分、五郎丸のキックを処理するスルジウが足を滑らせ、タッチ。残り5メートル地点でラインアウトを得て、ジャパンに絶好機が訪れた。2度のモールコラプシングのあとのラインアウトモールをドライブ、トライ寸前まで来たところでルーマニアは、ルスがコラプシング。ここでレフリーは、ジャパンのペナルティトライを宣告した。中央のコンバージョンも成功し、16×24。

 ところが32分、ルーマニアもペナルティトライを挙げて追い上げ態勢。スルジウが裏を狙ったキック。右CTB仙波智裕が押さえたもののキャリーバックになり、ルーマニアは残り5メートル地点右でスクラムを得た。プッシュオーバートライを狙って前進する中、スクラムが崩れ、倒れた堀江がトライを妨害する形になってしまう。このペナルティトライとコンバージョン成功でまたも1点差。再び緊迫した展開となったが、ジャパンは36分、連続攻撃で仕留める。敵陣奥、ピッチ右のラックから田中が左へ持ち出したところで、背後の死角から小野澤が分身の術を使うようにして左側へ移動してきた。ルーマニアは小野澤に対処できない。右中間へトライ。五郎丸のコンバージョンも決まって、23×31。39分、ルーマニアは敵陣22メートル手前でラインアウトのチャンスを迎えたものの、ボールキープに失敗。マイボールとし、ピンチを逃れたジャパンは42分、ノットロールアウェイによるPGを五郎丸が決めて、有終の美。欧州遠征初戦を白星で飾った。

 スクラムはやられてしまったが、ジャパンは途中からリズムよく攻められるようになっていた。ルーマニアのような肉塊軍団を相手にする場合、3回連続してクイックボールを出し、そのあいだに穴を衝いて、防御を後追い状態に陥れることができるかどうかが鍵を握ると思う。その視点でいえば裏へ出たあと、新たなラインが構築されているところへボールを運べなかったり、前半、速いボールリサイクルが叶わなかったりとまだ満点はつけられないとはいえ、及第点に近い、65点から70点の内容ではあった。後半からは半ズレで相手のフルコンタクトを避ける動きを見せるなど、適応力も垣間見せ、この点において、とくにリーチが素晴らしかった。また、田中、堀江がNZでITMカップに参戦し、巨漢と当たってきた成果か、相手のフィジカルに臆しない安定したプレーを見せた。そしてツイがボールキャリアーとして、接点の核としてもアクセントになっていて、FLはツイとリーチのコンビが現在のところ、ベストといえよう。この日のルーマニアは試合終了後、勝てば官軍のスタジオ放送席から「芸がない」などと評されていた。当たり勝つ局面が多かったにせよ、ジャパンにエリアを支配される展開でフィジカル・ラグビーに頼ってしまうと、多くのトライは望めない印象。ただ、前半36分のPGへ至る過程におけるパスムーヴはテンポがよく、FWで失格の烙印を押された人がBKをやらされているというようなチームでは、決してない。BK展開も、効果的なアタックを出せるようになるはず。3年後のW杯ではもう少しバランスのいいチームになっていると思わせるが、チームカラーはそうそう変わるものではない。断言するのは避けたほうがいいかも。

付記 本文中、選手名の敬称は省略としました。


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