イングランド、フランス撃破 3連勝でグランドスラムへ着々~シックスネーションズROUND3(前編)

画像 欧州最強国を決めるシックスネーションズは中1週の休みを挟んで、2月23日、24日にROUND3の3試合がおこなわれた。今回は前編としてイタリアvsウェールズ戦、イングランドvsフランス戦について記す。ローマのスタディオ・オリンピコ、ロンドンのトゥイッケナムとも大変な賑わいで、プレーはもちろんのこと、観客の熱狂も手伝ってTVで観ているこちらも心が躍った。とくにトゥイッケナムは最高気温5度、最低気温2度の寒さで、しかもナイトゲームにもかかわらず、大観衆が押し寄せていた。僕自身は、この程度の天候であればじっとしていても寒くないくらいの防寒対策を施して出かけていくし、イングランドのラグビー好きも同様だと思う。それでも観客に敬意を抱かずにはいられない。ヨーロッパ人は日本人にくらべて寒さに強い、という人類学的学説を聞いたことがあるが、真偽のほどかいかばかりか。単に寒さに慣れているだけ、という気がしないでもないけれど。

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 【●イタリア9×26ウェールズ○】

画像 前半6分にウェールズが、9分にイタリアがそれぞれPGを決め、3×3で迎えた10分、イタリアにチャンスが訪れる。キックキャッチのカウンターで切り返した3フェーズ目、後ろを通した右展開で右WTBジョヴァンバティスタ・ベンディティが、敵陣22メートルライン手前までゲインした。ウェールズにとっては、前のデコイランナーが邪魔になって最短距離でディフェンスに行けない不運も。しかし、ボールを浮かしてつなごうとしたところで、右FLシモネ・ファヴァーロがノックオン。ウェールズはあいだにノータッチのPKを蹴ってしまうミスがあったものの、キック処理のSHエドアルド・ゴリのノックオンに救われ、スクラムで連続して相手のペナルティを誘う。14分、PGで3×6としたあと、18分には、またもスクラムコラプシングによるPKを得て、PGを追加。世界屈指の右PRとして知られるマルティン・カストロジョヴァンニをめくり上げ、横に入っていくアングルの反則に追い込んだのだった。FBリー・ハーフペニーがここも堅実にポール間をぶち抜いた。

画像 イタリアは23分、左FLアレッサンドロ・ザンニのハイパントをキャッチしたSOダン・ビガーを捕まえ、左LOアントニオ・パヴァネロが絡んでノットリリースザボールに陥れる。PKはノータッチのミスキックだったが、右WTBアレックス・カスバートがノックオン。ここまで完全にやられているだけに不安が先立つ、チャンスがピンチであるかのようなスクラムである。しかし、残り5メートル左の位置から№8マノワ・ボサワイがなんとか右へ持ち出すことに成功して、チャンスは継続した。折りからの雨でハンドリングエラーが出やすい中、右LOフランチェスコ・ミントがノックバックして後退したのち、SOクリストフ・バートンがDGを狙う。左へ逸れて失敗に終わったが、29分、スクラムでウェールズの前列が引いたという判定によるPGで取り直す。6×9、ウェールズの3点リードで前半が終わった。

 後半4分、ウェールズに貴重な追加点が入る。しかも、トライだ。ビガーがハイパント。自ら確保したあと、SHマイク・フィリップスが空いていた裏へショートパントを蹴った。チェイスした右CTBジョナサン・デーヴィスがドリブルし、右中間で押さえる。コンバージョンも成功し、6×16。イタリアは8分、FBアンドレーア・マージの好タッチキックから、ウェールズが自陣22メートル内のラインアウトでキャッチミスしタッチ外へボールを逃してしまうプレーにより、残り6メートルの位置でラインアウトを得る。ラック右サイドを突いたボサワイが右FLジャスティン・テュビュリックに絡まれてボールを奪われたが、レフリーはアドバンテージをみていた。途中出場の左PRポール・ジェームスがラインアウトでジャンパーにチャージしていたのだった。イタリアはPGで7点差に詰める。

 しかしウェールズは、この試合でイタリアを圧倒していたスクラムの強さを11分、存分に発揮。敵陣10メートル左端でコラプシングのPKを得ると、ショットを選択。角度のある難しいキックをハーフペニーが決め、再びリードを10点とすると、20分にダメ押し。スクラムとは裏腹にラインアウトが不振で、この局面も自陣でボールを失ってピンチを招いたが、左チャンネル1へ走り込んだファヴァーロのノックオンによるマイボールスクラムで、カストロジョヴァンニを、ヘッドアップに陥れる。PKをタッチ→敵陣10メートルのラインアウトを起点に攻めた。1フェーズ目、縦に突進したフィリップスがザンニ、途中出場のHOダビデ・ギアゾンにがっちり止められたものの、後続のサポートが力強くスネークで押し込む。モールを作って22メートル付近まで前進、近場を3連続でクラッシュしたのち、左へ。後方を通して、9-10-14。あいだのデコイランナー、デーヴィスが内側のディフェンスの足を留め、カスバートがスペースを走って左コーナーへトライ。コンバージョンの2点を併せ、9×26。23分にイタリアは、ウェールズのノットロールアウェイにより、残り5メートル地点のラインアウトを得て、チャンネル1、2を突くアタックを繰り返したが、ウェールズの堅い防御に阻まれた。24分、ゴリがボールをさばき損ねてノックオン。ここで勝負あった感があった。

 後半18分にカストロジョヴァンニをシンビンに追い込んだように、この試合のウェールズはスクラムの優勢が光った。勝因のすべてといっても過言ではない。雨でウェールズらしい華麗なアタックを出せない条件ではあったが、後半20分のダメ押しトライにその片鱗。フィリップス=ビガーのHB団はウェールズが秘める攻撃力を引き出しているとはいえない現況だけれども、勝利によってバイオリズムが変わってこないだろうか。さらに追い風はFLサム・ウォーバートン、LOアラン=ウィン・ジョーンズがリザーブながら復帰してきたこと。次戦は良化が顕著な内容を期待したい。イタリアは、キャプテンにしてオールブラックスのキアラン・リードと並び称されるくらいの世界的№8セルジオ・パリセが、先週、所属するスタッド・フランセのゲームで出場停止処分を食らい、欠場していた。ここ一番で頼りになる人だけに、いてくれればゴール前へ攻め込んだ際に1トライくらい取ってくれたのでは、と思いたくなる。ただ、代わりに出たボサワイの健闘は収穫。ランナーとして魅力だ。得点力を上げるなら、2人を同時に起用する手も考えられる。


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 【○イングランド23×13アイルランド●】

画像 前半1分にイングランドがPGで先制。フランスは4分、PGを返す。入りからブレイクダウンの攻防が激しいうえ、両チームともテンポを重視したアグレッシブなアタックで観る者を飽きさせない試合になった。24分、イングランドはノットロールアウェイのPKで敵陣22メートル地点のラインアウト。4フェーズ目、右へ振り、SOオーウェン・ファレルのパスに右CTBマヌー・トゥイランギが走り込み、ステップを切って残り5メートルへ迫った。デンジャラス・ランナー、トゥイランギの突破をフランスはSHモルガン・パラがアンクルタップ。右FLティエリー・デュソトワールが捕捉したが、ペナルティがあり、ファレルの右方向へのキックパスが右WTBクリス・アシュトンの頭上を超えてタッチを割ると、アドバンテージが適用された。イングランドはここでPGを追加。しかしフランスは28分、イングランドのFBアレックス・グードのハイパントを右WTBヴァンサン・クレールがキャッチし、左チャンネル1、左LOクリストフ・サムソンのクラッシュを挟んで、さらに順目。右LOヨアン・マエストリがパスアウト、SOフランソワ・トュラン=デュック-右CTBマチュー・バスタロー-左CTBウェスレイ・フォファナとつなぐ。フォファナが瞬時に加速してハーフウェイ付近からビッグゲイン。SHベン・ヤングスを外し、アシュトンのアンクルタップもかわして左中間まで走り切った。コンバージョンも成功。6×10と逆転。連敗スタートのフランスが、今日の俺たちは違うぞ、というところを見せつけた。

画像 37分にイングランドはPG。1点差に迫ると、後半7分、ラインアウトモールのコラプシングによるPGを追加。12×10にし、再びリードを奪った。フランスは11分、PKをハーフウェイ付近で果敢に仕掛けてきたイングランドの連続攻撃で、左PRトーマス・ドミンゴが№8トム・ウッドに絡んでノットリリースザボールに陥れる好守備。PKをタッチへ蹴り出し、敵陣22メートル手前でラインアウト、さらにタックルへ入ったプレーヤーのノックオンにより敵陣10メートルと22メートルのあいだ左でスクラムと、チャンスのセットピースが続いたが、このスクラムでアーリーエンゲージ。FKを得たイングランドはグードが敵陣へハイパントを蹴った。落下点でいったんフランスがキープしたラックのボールをイングランドのプレーヤーが足にかけ、左へ転がったボールがトゥイランギに入る。フランスにとってみれば、崩れた状況でボールを絶対に渡したくないプレーヤー。22メートルライン手前からトゥイランギが驀進、左隅へ駆け込んでいく。フランスは16分、PGで17×13に詰め寄ったが、イングランドは途中出場のHB団、経験をいえばスターターをしのぐSHダニー・ケア、SOトビー・フラッドが巧みにゲームを組み立てたこともあり、敵陣奥へなかなか斬り込めない。イングランドは32分、36分とPGを追加。3連勝を飾り、優勝そして大会最高の栄誉とされるグランドスラムへまた1歩、近づいた。

 フランスは先発メンバーを大幅にいじってきた。とくにHB団をパラ、トゥラン=デュックに代えたのは大正解。以前、この欄でも指摘したが、ふつうに考えれば、判断に優れ、パスもランもキックも巧い2人にゲームを任せるべきである。まだ勝負がついていない後半途中、過去2戦の先発HB団、マキシム・マシュノー、フレデリック・ミシャラクが相次いでピッチへ登場したのには少々驚いたけれども。あと、フォファナの12番起用も当然で、バスタローとのCTBコンビは無限の可能性を秘める。ボールを持つ機会の多い9、10、12、13のポジションがしっくり来ていた。FWでは№8ルイ・ピカモールがずっと好調。ようやく巻き返せる態勢が整ってきた感じだ。3連敗を喫してしまい、もう優勝の目はないけれども、残る2戦、意地や誇りを胸に秘めて勝利を目指す姿を観るのが楽しみになってきた。

 イングランドは前半、フランスにいったんリードを許しはしたが、安定感抜群の内容だった。ディフェンスが堅い。主として、アタックラインの外側にプレッシャーをかけるアンブレラ・ディフェンスを駆使する。神戸のCTBジャック・フーリーも得意としていて、彼の場合はプレッシャーをかけに行って状況を見極めてすぐに下がる動きの速さが秀逸なのだが、イングランドの防御ラインにも同じことがいえる。針金を通して人形を操作する卓上のサッカーゲームのようだった。突破を許したあとの戻りも速い。それでいてセット、ブレイクダウンも良好で、トゥイランギ、アシュトン、左WTBマイク・ブラウンがいて決め手も十分なのだから、文句のつけようのないチームだ。MOMは働き者のキャプテン、右FLクリス・ロブショウが受賞したが、FWは皆、持ち場で手堅く、力強いプレーを貫いており、全員が好調といえる。また、フィットネスの高さも魅力だ。昨年11月、オールブラックスを破っているからすでに実証済みではあるが、実力は現在の世界ランキング上位3傑、オールブラックス、スプリングボクス、ワラビーズに肉薄していて、とくに後者2チームよりは上を行っているのではないかとさえ思わせる。死角は見当らない。グランドスラムはほぼ確実、と書いても、たぶん叱られはしないだろう。

付記 本文中、選手名の敬称は省略としました。


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この記事へのコメント

たあくん
2013年02月28日 13:42
試合の情景が蘇ってくるような感じで楽しく拝読させていただきました。フォファナとバスタローのコンビは大会前から楽しみにしていたので、次戦も期待したいです。状況に応じて意図的に二人のポジションを入れ替えていたように見えましたが、素人目に、バスタローが12、フォファナが13の方がいいように感じました。
なぎさ
2013年02月28日 22:41
 コメントありがとうございます。
 やっとフランスの格好がついてきました。フォファナとバスタローのCTBコンビ、たしかにいい。

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