京産、攻守に好プレー続出、後半点火&立命、入りにリード許すも泰然と逆転~関西Aリーグ第1節

昨秋、「ハーフタイムのコーヒーブレイク」№76において、同志社ラグビーを応援するサイト「Dサポートネットワーク」を紹介した。体育会の活躍を伝える学内スポーツ新聞がラグビーに特化し、学外ウェブ版になった趣があって、もともと好感を抱いていたが、当サイトがときどきリンクされている関係で、過去に主宰するかたから丁寧な挨拶を頂戴している。この「Dサポートネットワーク」の大学ラグビー欄には現在東西の主要3リーグの星取表、J-SPORTSの放映予定と併せ、、『大学ラグビーを見る!読む!』と題したリンクページが設けられている。同志社だけでなく大学ラグビーを報じるインフラとしてさらに進化した「Dサポートネットワーク」には、京産の総監督、大西健さんが前々から「自チームだけでなく関西全体が盛り上がらないといけない」と仰っていることや、古くは現関西協会々長の坂田好弘さんが大体の監督を務めたのを皮切りに小松節夫さん(天理監督)、萩井正次さん(前関学監督)といった同志社OBが他校を指導していることと、どこか通じるものを感じる。そういう志の高い場所へこちらの近大vs関大、天理vs大体の観戦記がリンクされるのは大変光栄で、この場を借りて感謝申し上げたい。そしてもう1つ、他サイトの紹介。天理の応援ツアー等を企画されている「親父のラグビー番外編」の広報の親父さん、いつも当サイトを取り上げていただき、ありがとうございます。初戦の敗退にがっかりされたご様子。学生たちに、そばで応援する人の熱い思いが伝わるといいですね。
開幕の4試合はどれも熱戦だった。その印象をひとことでいえば、タックルしたチームが勝った――ということになるが、関西はとりわけ、メンタルが鍵を握るリーグだと思う。関東対抗戦の上位チームが下位チームとの試合でまったく精彩を欠く内容だったとしても、負けることはまずない。しかし、関西は魔界へ迷い込む時間帯が長く続くと命取りになる。昨年も予想外の接戦、もしくは予想外の大差決着をみたカードがいくつもあった。一応、力の差は存在するけれども、個々の対戦カードはどれも流れひとつで勝敗がひっくり返る差といっても過言ではない。「我々は何者なのか、我々のラグビーとは何なのか」を確固たるものとして常に意識し、多少のミスや失点にめげず、試合中にその場所へ迅速に立ち帰ることのできるチームが、最終的に優勝の栄冠を勝ち取るのではないだろうか。
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【●関西学院大学19×30京都産業大学○】
関学の失トライは、ディフェンスの脆弱ぶりを指摘したくなるようなものでは決してなかった、と思う。相手の個人技にやられた。ただ、負けてなお勝者に劣らぬ評価を与えたくなる内容でもない。アタックにおいて密集プレーや、ゴチャついた場面の連係にぎこちなさを感じた。ジュニア・ジャパンにも選ばれている徳永はサイズ、走力、スキルとも申し分なく、この中へ入ると格上感が漂うはずだが、そこまでの存在感を示せなかった。あと、個人的な考えだが、ハーフを早目に代えたほうがよかったのではないか。徳田にケチをつける気は毛頭ないけれど、山本のビッグタックル連発に象徴されるように、京産のディフェンスのピントが後半、完全に関学のラインアタックに合ってしまい、相手が「サントリーでもオールブラックスでもかかってこんかい!」というような嬉々として守る状態になっていた分、リズムを変える必要があった。後半、得意のフラットパスが危険なプレーになるという攻守の関係は1年生SO、清水にとってつらかったことだろう。京都成章時代から個人的に好きな選手でもあり、彼にはここからの反発を期待したい。前半に1度見せたけれども、外側へ開くように仕掛けながら創造的なプレーをする姿が、オールブラックスのSOアーロン・クルーデンに似ている。この試合のような展開で、すぐに裏のプレーを使えるようになると、いよいよ本物だ。チーム全体に次戦、改善してほしいのは、各プレーヤー間のコミュニケーションを密にすること。素点の高さをいえば、優勝争いに加わる力を有するチームである。あと、前半、流れに乗れない因となったラインアウトの修正も必要か。
京産は、昨年からレギュラーのメンバーが多い。久しぶりに彼らを観た印象をひとことでいうと、「みんな巧くなっている」の一語。ディフェンスのハイパフォーマンスに関しては先述したが、逞しさも増しており、芦塚をはじめとするFWのワークレートにBKの才能が融合する今回みたいなゲームをいつもやりたいだろう。本音をいえば、「BKはまだまだこんなもんじゃない」と自負しているのではないだろうか。上積みの余地をまだ十分に残しているように思えるのだ。三原と山下のタレント性はすでに実証済み。積極的なゲームメイクをする梁、ディフェンスの鬼で堅実なプレーをする山本、大柄で突破力のある増田、変則的なムーヴで動きが読みづらい右WTB森田慎也といった具合に、個性的な面々が揃う。今季の京産は爆発力に期待できそうだ。
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【○立命館大学40×26同志社大学●】
33×21となったが、同志社は果敢なアタックで風下の不利を克服せんとしていた。29分、インターセプトを狙った山中のノックオンによって残り6メートル右でスクラムを得ると、途中出場の№8西林宏祐の右8単。西林はFLに入っていた和田健吾を退け、松井へパスを放す。松井が右隅へトライ。コンバージョンは外れたものの、7点差となり、試合の行方はまったくわからなくなった。しかし立命は33分、同志社の左チャンネル1、途中出場のSO長井一史に対し、庭井が好タックル。ターンオーバーに成功し、直後の蹴り合いに勝って敵陣へ進出する。34分、アクシデントオフサイドで22メートル中央、相手ボールスクラムとなったが、同志社がアーリープッシュで同位置のスクラムを選択。仕切り直しとなった。37分、右チャンネル1、右PRに入っていた大崎雄広がノックオンしたが、立命は依然として地域で優勢。39分、自陣奥からチャンスの萌芽を求めてボールを動かす同志社に対し、宇佐美が強烈なタックルを見舞ってハンドリングエラーを誘い、マイボールとした立命は40分、連続攻撃の末、同志社のディフェンスを崩す。最後は井之上が左へさばいたボールをもらった途中出場の右WTB吉原浩之介が、目前のギャップへ走り込んだ。中央へトライ。コンバージョンの2点を併せ、40×26として勝負を決めた。
入りに連続トライを挙げて幸先のいいスタートを切った同志社だったが、敗因を指摘するならタックルだろう。正確なスタッツは分からないが、タックルミスは20を超えていると思う。優しいコンタクトが多い。立命が好タックルで流れをつかんだだけに、同志社のソフトタックルが陰影を伴って強調される内容だった。まず、この点の修正が急務だ。好感を抱いたプレーヤーは秋山。前半21分、ボールを持ち出した井之上を捕まえに行った際、上体が高かったゆえにダッキングでかわされた3フェーズ後、9-10-6の右展開、中村に刺さってノックオンを誘ってミスを帳消しにしたプレーを筆頭に、キャプテンらしさを感じるシーンがいくつか。この内容だと、観る者があまり記憶してくれていないかもしれないが……。あと、昨年度のキャプテン、正確には「5回生」となる西林を今後、どういう形で使っていくか。彼の突破力は屈指。この日のようにジョーカーカードとして使うのもたしかに面白い。この試合の総評としては、ミスが散見されたし、タックルの成功率の低さが不満ではあるが、チームが熟れてくるのが11月までずれ込んだ昨年よりも仕上がりはいい、という印象。
立命は開始早々の失点にも慌てず騒がず、といったゲーム運びだった。前半、隙を見せたディフェンスは、後半に入ると修正ができていた。タックルが決まり出すと接点で巧みに立ち回り、敵とすれば相当に厄介――立命の持ち味を発揮した内容といえよう。アタックでは大外へ振って高木が走り切るシーンもあったけれど、アングルを駆使し、スペースを意識しながらサポートがついていくムーヴに進化しているように感じた。フィジカルの強さは関西ではトップクラスだし、立命の強みは、出来に波のないプレーヤーが多いことにあると思う。とくにキャプテンの庭井、井之上、山中は攻守において高いレベルで安定している。個人的MOMは流れを呼ぶ好タックルの数々、そしてセットの安定と前へ出る力を評価して、庭井。
付記 本文中、選手名の敬称は省略としました。

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